「 はて?」 N氏は、夜中目が覚めてしまい、そのまま 寝付けずに仕方なく深夜放送をみたりして時 間を潰す事すがよくあった。 その日も、深夜に目が覚めてそのあと寝付 けずにいたN氏は、またテレビでも見て時間 を潰そうと居間へいく為に寝室のドアを開け たのだった。 ドアを開けた彼は、そこで呆然として立ち つくしてしまうことになった。何故なら彼の 目の前には、居間へ向かう短い廊下ではなく、 赤絨毯を敷き詰めたとてつもなく長い廊下が 続いていたからである。 彼は、一瞬迷った後、意を決してその廊下 を歩きだした。足の導くままに歩くと、モそ こには大講堂のようなスペースが広がってい る。 その終点をみると、周りより数段高い位置 に、数多の美しい宝石で飾られた玉座が鎮座 している。 絨毯の赤い道の両サイドには、大時代的な 衣装をまとった文武百官が居並んで頭を垂れ ている。 その入り口にいた侍従風の男が、 「陛下、あちらへ…」 N氏は、侍従風の男に即されるまま、玉座 につこうとしていたその時、 「陛下、お覚悟!」 居並ぶ文武百官の中から短剣を持った男 が、N氏に突進して来るではないか。N氏は、 いきなりの事態急変にとっさに対応できず、 短剣を胸に突きつけられたその時…、 がばっと目が覚めたみN氏は、未だ床の中 にいた。胸のあたりを探ってみても、何処に も痕はない。 「…夢か…」 狐に摘まれたような状況。 スリル満点の夢。 そんな夢を見たあと寝付けるはずもなく、 茶でも飲んで気を落ち着けようと、寝室のド アを開けると、そこには… あたりは白い霧のような、雲のような、そ んな背景に包まれている。永遠と続く人の列 がある。 N氏は、何の気なしにその列の最後尾に並 ぶ。その人の列は不思議と生気がなかった。 少しずつ列が進み、とうとうN氏の番が来る。 そこは、異様な雰囲気に包まれていた。 両側に獲物を構えた赤鬼、青鬼(!)。 時代劇のおしらすの様な場所。 彼が恐る恐る見上げると町奉行は、閻魔大 王だった。 「その方、生前の悪行、この閻魔も見過ごす わけにはいかない。」 「めっ、滅相もございません…。」 N氏は、必死の形相で冤罪をはらそうとす るが、かえってそれが逆効果になった。 「ええい、口答え申すな。これに証拠がある。 よってその方には地獄行きを申し渡す。引っ 立てぇ!」 赤鬼、青鬼に引っ立てられて、地獄行きと 書かれた雲の切れ間から、突き落とされたそ の時… バッ! またしてもN氏は間一髪で目が覚める。 「…また、夢」 また目が覚めてしまったN氏は、夜食でも と思い再び自室のドアを開ける。 ドアの外は戦場だった。 N氏もフル装備の兵士だった。 砲声、銃声が飛び交う。 「伏せろ!」 何処からともなく聞こえる声に驚いて、伏 せようとしたその瞬間、銃弾がN氏の眼前に あった。 目が覚めた暗い自室。 「一体何なんだ…」 N氏は冴えた目をこすって読書灯をつけ る。そのまま起きあがると、今度は手許にあ った新聞でハリセンを造るとそれを得物に、 慎重にドアを開けた。 「私の勝ちだな。」 「…しまったそう来るか…!」 「…」 「もう一回!」 四人の仙人様の男が卓を囲んで喚声を上げ ている。 N氏は、近寄ってたずねた。 「麻雀ですか?」 「否」 「では、何ですか?」 「夢双六というものじゃ、お前さんわしの後 をやらんかね。」 卓上に、双六の番がある。 問題はそのコマの一つがN氏だったのだ。 N氏は、手にしていたハリセンで四人をシ バいてノックダウンにすると、もと来たドア を通って自室に戻って行った。 「…これでぐっすり眠れる…」 〜 劇終〜