『奇跡の代償』 雪が降っていました。 学校の誰もいない中庭に雪が降り続いてい ました。 …そう、ちょうど去年の今頃のように… (1) 四時間目の授業を終えるチャイムの音が聞 こえる。  号令が終わり先生が教室からでていくと、 お弁当の包みを抱えた私は、いつものように 祐一さんのクラスへ急いだ。 「祐一さんいますか?」  三年生の教室の前で声をかけると、 「祐一、栞ちゃんが来たよぅ。」  名雪さんの声が教室の中から聞こえる。 「あっ、名雪さんこんにちはぁ!」  「こんにちは、栞ちゃん。今日はどんなの作 ってきたの。」 「あけてからのお楽しみです♪」 「まぁ、なにが手できても栞が作ってきたも のだがら味は保証付きだが。」 「当前でしょ。栞はあたしより料理がうまい んだから。」 「お姉ちゃん…。」 何となく、照れてしまった私に、 「良かったね、香里のお墨付きだな。」 北川さんがほめてくれる。そういえば、北 川さん、何となくお姉ちゃんといい雰囲気…。 いつの頃からだろう、こうして祐一さんた ちの中でお弁当を食べるのが日常になったの は…。 クラスで仲のいい友達もいるけれど、お弁 当だけは何となくこうして、祐一さんたちと 一緒に食べるのが日課になっている。 包まれるような暖かさって、こういうこと なのかもしれない。 「なぁ、栞。」  手早く広げたお弁当をつつきながら、 「二月一日の夜は明けておけよ。」 「えっ?」 「家で栞ちゃんの誕生日をやるんだよ。」  名雪さんが口を挟んだ。 「…どうして、裕一さんの家で?」 「祐一がどうし…むぐッ。」  祐一さんは、大慌てで名雪さんの口を無理 矢理押さえ込んでいった。 「名雪が…どうして持っていうんだ。それに 秋子さんも大歓迎だそうだ。あの人は人が沢 山集まるのが好きだからな。家族が増えたみ たいだって。」  そこはかとなく、苦しい誤魔化しに近い真 実…。たぶん、秋子さんも名雪さんも大賛成 したに違いない。だけど、祐一さんのあわて ふためく笑顔には、『俺が栞を呼びたかった んだ』ってちゃんと書いてあるのが私にはわ かって私は思わず吹き出しそうになっるのを 必死になってこらえた。 「むぐぅ…、祐一苦しいんだよぅ…」 「あっ悪い、名雪。」 苦しそうな名雪さんの口元から祐一さんが 両手をはなす。 「うー」と名雪さんが少し拗ねた後、 「イチゴサンデーと、イチゴクレープ!…そ れで許してあげるよ。」 「…やむをえん」 「どうする、栞ちゃん?」 名雪さんが、改めて私に問いかけてくる。 誕生日…  そう、あれから一年の月日が過ぎようとし ている。  私が佑一さんと出会ってから、もう、一年 雪が降る季節… 不治の病… 絶望にくれた日々の中で、ただ時だけ刻ん でいたあの頃…。 買い物の荷物が一杯に入ったコンビニ袋を 持っての帰り道… 久しぶりの外出そして、最後の外出になる はずだったあの日、いきなりの頭上から雪と 共に、佑一さんとあゆさんに出合った。 そして、家に帰って、まるで掛け合い漫才 コンビのような二人の会話を思い出したとき、 私は何故か悲しくなって、手に取ったカッタ ーナイフを床に落としていた。 また、会えるかな… なんとなくそう思って、久しぶりに学校へ 出かけると、佑一さんとまた巡り会えて… 『奇跡は…、起きないから奇跡なんですよ。』 そんな風に嘯く自分がいて、それを受け止 めてくれる佑一さんが私の前にいた。 だからこそ、今の自分がいるんだと私は思 う。病院の先生は、「医学的に信じられない 奇跡」などという。その「奇跡」は、今、目 の前にいる佑一さんとあゆさんがくれたもの だと私は信じている。 「どうしたんだ、栞?」 一寸考え込んでいた私をみて、心配そうに 声をかけてきた。 「えっ、えぇっと…何のお話でしたっけ…?」 「栞の誕生会の話。」 お姉ちゃんがいった。 「一日は病院の『定期検査』があるから…」 今の私は、流石に運動は苦手だけれど、再 び病気が再発することもなく、健康に一年が 経過している。 月一度義務付けられた『定期検査』は、結 局「現代医学であり得ない奇跡」の具体例と しての私を、一種の研究材料として扱ってい るのはわかっていた。それも今度の「検診」 で終わる。あとは一年ごとになるのでもう、 煩わしい病院通いは当分無くなる。 「…『定期検査』か、それじゃしょうがない な。それじゃ、五日にでもするか。土曜日だ し…。」 「…それなら大丈夫です。」 「そうだね。五日は土曜日だし、栞ちゃんも 香里も泊まっていけばいいよ。」 「俺はどうなる。」 「北川、おまえも泊まりたいのか。」 「北川君も泊まっていって大丈夫だよ。部屋 は未だあるから。」 「さすがは水瀬、話が分かる。」 「そういえば…、」  私はふと一年前のことをもう一度思い浮か べる。 「あれから一年経つんですよね。」 「はやいな、もうそんなに経つのか…。」 佑一さんは感慨深げに頷いた。  そういえば、あゆさんは、今頃どうしてい るんだろう…  私が病から回復して以来、私はあゆさんの 顔を見たことがなかった。祐一さんなどにい わせると、『春眠、しているんだろう』と気 にもとめない様子で、また冬になれば出会え るなんていっているけれど… 「あゆさんどうしているんでしょうね…」 「そうだなぁ…そろそろ襲来してきてもいい 頃なんだがなぁ」 「祐一…。『襲来』って元寇の高麗軍じゃな いんだから…」 名雪さんが苦笑する。 「いや、あいつはいつも襲って来るんだ。焼 きたての鯛焼きを食い逃げして…」 「くい…にげ…、ですか…」 私は、耳を疑って苦笑いしながら聞き返す。 「そう、食い逃げだ。食い逃げしながら体当 たり攻撃を仕掛けてくる。だいたい、栞もそ の被害者じゃないか。」 「え?」 「あの時、栞が雪をかぶったのは、あゆの体 当たり攻撃を俺がよけた結果だぞ。」 私と、祐一さんと衝撃的出会いのシーンを そんな風にいう祐一さんに 「そんな事言う人嫌いです。」  いつもの用に少し拗ねる様子を見せてから、 「あれは、あゆさんが祐一さんに再会の感動 を伝えたかったんじゃないですか?それに…」 「そうともいう。それに、あれがなかったら、 今頃、栞ともこうしてつき合っていなかった しな…」 …照れ笑い… 「なんか、思いっきり恥ずかしい事言ってま すよ…。」 そういう私も自分の頬が火照っているのを感 じる。 「ねぇ、あゆって誰なの?」 「羽を生やした鯛焼き喰い逃げ少女だ。」 「食い逃げ…?」 「?」マークのお姉ちゃん。 「まぁ、気にするな。」 祐一さんが話を納めようとすると名雪さんが 「そういえば、『あゆ』ちゃんて誰かに似て いるような気がする…」 と呟いた。 「…」 「…八年前…」 名雪さんは考え込むような顔をして 「そう、八年前祐一と仲良くしてた子だ よ。」 「…良く覚えていたな…」  何となく、寂しげな表情を見せる祐一さん。 私には祐一さんが、この話題を避けたがって いるように感じた。 「もしかしたら、祐一の初恋のコだったんじ ゃないかな…」 「ふーん。」 お姉ちゃんは、少しからかうような視線を祐 一さんに向けた。 「…初恋の人…」 私は、何となく寂しさを感じた。 「栞、別に隠してたって訳じゃ…。おい、名 雪、なんて事を…」 「八年前のわたしのお小遣い、あの子のため に使ったんだよね…。」 「知ってたのか…」 「名雪に隠し事はできないわよ。」  でも、名雪さんの言葉には、続きがあるよ うだった。 「でもね、その子は…」 「…」  二人とも黙り込んでしまう…何となく寂しそ うだった。 その話題から、お姉ちゃんと北川さんは巧 みに無難な話題に話を逸らし、また、普段通 りの日常に戻っていった。  続かない言葉の向こう側に何があるのか、 私にはわからなかった。…でも、これ以上は、 祐一さん本人の口から全てが語られる日まで、 そっとして触れないでおこうと思った。 (2) 朝から始まった「定期検査」も、主要なス ケジュールを滞り無く終え、後日の正式結果 待ちだけになった。 あちこちをたらい回しにされる、煩わしい この恒例行事。否応なく慣れ親しんだ病院と もこれでしばらくの別れだと思うと、なんだ か少しだけ寂しいような気がする。  そういえば、この病院ともかなり長い付き 合いになる。 発病して最初に入院したのが小学校にあが る前後のことだから…。それから、考えると もう十年来お世話になっていることになる。  今まで生きてきた短い時間のほとんどを病 室。自宅にいた時間よりもずっと長い時間を 過ごしたベッドも一年程前から、ほかの誰か が使っているんだろうと思う。  病院内での生活。小児病棟での時間が止ま ったような日常。会計までの時間に一寸した 時間が出来たので、そんなことに思いめぐら しながら、ロビーで読むでもなく開いている 読みかけの文庫本からと、ふと視線をあげる と、私の前を横切る人影があった。 私には、その後ろ姿に見覚えがあった。  …大好きな祐一さんの叔母さんにあたる人。 名雪さんのお母さん…。 …水瀬秋子さんだった…  秋子さんは、何かいつもと様子が違った。 そのときは、何が違うのかわからなかった。  声をかけるのは気が引ける気がしたけれど、 何となく黙って行き過ぎるのを見ていてはい けないような気がして、秋子さんを呼び止め た。 「…秋子さん…ですよね。」 「えっ?」  秋子さんは、一瞬少しだけ驚いたような動 作を見せ、私の方を振り返った。 「しおり…ちゃん?」  表情にこそ出さないが、やっぱり何かいつ もと違った翳りがある秋子さんがそこにいた。 「…こんにちは。」  とりあえず私は、挨拶をする。 「こんにちは、栞ちゃん。今日はどうしたん ですか。」  そういった秋子さんの笑顔は先ほど翳りな ど微塵も無い、いつもの優しい微笑みだった。 「えっ…と、『定期検査』です。」  あの表情の翳りは、見間違いだったのだろ うか…、いやそんなことはない。あの翳りに は、理由がある。私には、何故かそんな確信 があった。 「…ああ、そうだったわね。」 それが証拠に、会話が少し上の空で、ふと した加減で一瞬垣間見せる虚空を見つめるよ うな瞳。ほんのわずかな、微妙な表情の変化 だったが、私には、何となく違いがわかった。 「…そうそう、土曜日のお誕生会。期待して いてくださいね。」 そう私に伝えてから、何となく考え込むよ うな素振りを見せて 「…そうね、伝えておいた方がいいかもしれ ないわね…」と呟くと、一呼吸おいてから 「栞ちゃん。もう今日の予定は全部終わった の?」 と口調を改めて問いかけてきた。 「はい。後は会計だけなので。」 「そう、少し私に時間をくださいね。一緒に 来てもらえるかしら。」 と、秋子さんはそう言った。   「…いいですよ、でも何処へ?」  私の問いかけに秋子さんは答えることなく、 話し始める。 「歩きながらで悪いけれど、聞いてほしいお 話があるの…」 「お話って…」 私は、秋子さんにの横を歩きながら訊ねる。  いつもの頬に手を当てる動作をして、私の 方を振り向き、そして、いつもより真剣な眼 差しで語りかけてきた。 「…八年前の話。」   「…八年前。」 「そう、八年前…。」 「…何があったんですか。」  この間途切れた名雪さんの話も八年前…  今の話も八年前… 八年前に何があったのだろう… 「この街の森にあった、この街一番の大木の 事をご存じですか?」  …街一番の大木の話…  そう言えば、ずっと昔、お姉ちゃんから聴 いたことがあった。 『この街の外れの森の中に街一番の大きな木 があるの。危ないから登るなって言われてい るけれど、登れたらこの街全体が見渡せて気 持ちいいでしょうね。栞、病気が治ったらこ んど一緒に登に行きましょうね。』 お姉ちゃんの目は、何となく楽しそうだっ たので、私も一緒に楽しくなッ他のを覚えて いる。 けれども、結局、お姉ちゃんも、そして私 もその木に登ることはなかった。当時は「奇 跡でも起きなければ直らぬ不治の病」だった から。でも病気が治った今なら、道具を使え ば登れないことも無いだろうけど、まさかや らないだろうし、仮に登ろうと思っても、現 実にはもはやそれは無理な相談だった。  なぜなら、その大木は…。 「…確か、その木が切られたのが八年前…で したね。」  私は、その話をお姉ちゃんから聞いたとき とても悲しかった… 「…そう。」 そうぽつりと呟いてから秋子さんは、次の言 葉を続けた。 「あの木が、どうして切られることになった 理由、知っていますか。」 「いえ…」 「そう…。その様子だと、祐一さんは栞ちゃ んに未だ話していないようね。」 少し考え込んだ後 「いいわ…」 そして、一つため息をついてから、 「…女の子が落ちたんです。」 「え…?」 私は、驚いて秋子さんの方を向く。 「男の子を木の枝の上で待っていた女の子が 男の子の目の前で風にあおられて…」 気がつくと、秋子さんと私の前には、とあ る個室病室の扉があった。 「そして、その女の子は最近までずっと眠っ ていましたこの部屋で…たった独りで…その 女の子の名前は…」 秋子さんは、病室のドアを開けながらそこ で言葉を止める。 ふと、目を逸らした私の視線の先には、ド アに取り付けられた病室の名札には、私の知 っている名前が書かれていた…。 「…『つきみやあゆ』…」  秋子さんの言葉と同時にそう呟いている自 分がいた。  私が移した視線の先にいた少女は、少しだ け去年と雰囲気が違っていたけれど、間違い なく私が良く知っている「月宮あゆ」さんだ った。 「…あゆ…、さん」 「…え?」 一瞬の間。あるはずのないことに驚いたよう に私を見つめると、 「…栞…ちゃん?」 彼女は、聞き返してきた。 つかの間の時間は、永遠に感じられるほど長 い…。 時として、人はそんな風に感じると言うけ れど…まさにそのときの私はそんな風に感じ ていた。 雪国特有の冬の日差しが差し込む、午後の 病室。逆光の中のベッドに半身を起こして佇 む少女。何となく、去年までの私を見ている ようで心が痛んだ。 流れの止まった私の時間を再び動かしたの は…、今度もまた、去年と同じあゆさんだっ た。 「…栞ちゃん、栞ちゃんでしょ。」 「…そうです。こんにちは、あゆさん。」  相当ぎこちない返事をようやく私が返すと 「元気になって良かったね。ボク、ずっとお 祈りしていたんだよ…」  笑顔の瞳の中、輝くのは光の結晶。 「『夢』の中で、ずっとしんどそうだったか ら、心配だった…だって…」  その先の、あゆさんの言葉は、涙声で聞き 取りにくかったけれど、私はしっかり聞き取 った。 「…大事なお友達だから…」   私は、わき出す感情の赴くまま、あゆさん と抱き合っていた。 「…うぐぅ…栞ちゃん苦しいよぅ…」 照れたようなあゆさんの声が聞こえたが、 私ははなさなかった。 「…栞ちゃん」 私の瞳から頬に熱いものが伝わる。  …暖かな午後の日差しを感じる  言葉なんかいらなかったのかもしれない…。 ただずっとそうしていたかった…。   …ただずっとそうしていたかった… (3) 『前略  栞さん、祐一さんお元気ですか。  突然ですみませんが、今年もまたあゆの誕 生日会を開かせて貰うことにしました。 名雪もあゆもお二人が来るのを心待ちにして いますので、今度の土曜日には、お二人そろ ってお越しくださいね。     かしこ 追伸  まだまだ、寒い日も続きますので、お風邪 などひかないようにお気をつけください。』  秋子さんからの消印なしの手紙が届いたの は火曜日のことだった。大学から祐一さんの アパートに帰ると投函されていたのだった。  私が祐一さんのアパートで一緒に暮し始め てそろそろ一年が経とうとしている。 祐一さんが大学の近くにアパートに引っ越 したのは、大学の合格通知の届いたすぐ後の ことだった。 名雪さんとあゆさんは、祐一さんがあの家 にいることを望んでいただろうし、秋子さん だって、家族が減ることを望んではいなかっ たから、祐一さんの事実上の独立を「了承」 をしたのはたぶん祐一さんの想いを察しての 事だろう。 つまり、初恋のあゆさんと従姉妹の名雪さ ん、この二人に私が気兼ねしないように配慮 してくれたんだと思う。 当の祐一さんは、 『…これで気兼ねなく念願の独り暮らしが出 来る。最初の計画では、この街に来ないで向 こうの家で独り暮らしをしたかったんだけど、 それじゃ栞ともこうして出会えなかった訳だ しな…』と最初から大学入学の機会を狙って いたような言い方をするが、その言葉は祐一 さんなりの気配りなんだろう。 私が、暮らすようになったのはそれから一 年位してからだ。  アパートと水瀬家は、駅で一駅程度だし、 バイクや自動車なら一時間くらいの距離だっ た。しかし、私が祐一さんと一緒に暮らすよ うになってからはこちらから二人で訪問する ことはあっても、向こうから来ることはあま りなかった。   後できいた話だけれど、これは秋子さん自 身がわざわざここまで持って来てくれらしい。 『本当は電話で用件をすますことも出来たけ ど、ついでもあったし、そけれだけでは味気 ないから。』 秋子さんらしい気配りだった。 ここ半年ぐらいあゆさん、名雪さんとも会 っていない気がする。そんな意味からも、こ の誘いは嬉しかった。 今でも思い出す二年前の冬。 私の誕生日会のひとこま。 『…ボクも祐一君ともう一度あえて嬉しいけ ど…でもね…』  あゆさんは、涙を浮かべながら祐一さんに 言った。 『…でもねボクは、祐一君には栞ちゃんとず っと仲良くしていてほしいよ…だって、祐一 君も栞ちゃんも大切なボクの友達だから…』 私は、あゆさんと出会えて本当に良かった と思っている。 …だから今度は私からあゆさんに何かして あげる番と思った。 水瀬家の前。 降り続く雪の中。 祐一さんに編んで貰った真新しいストールを 羽織った私。 門の前で合流したお姉ちゃん。 「栞。相沢君とはうまくやってる?」 お姉ちゃんは北川さんと何故か一緒に来てい た。 「それどういうことだよ。」 「さぁ…、どういう事かしらね。ふふ…」 少し、気を悪くする祐一さんにお姉ちゃんは にまっと不敵な笑いをする。 「漫才はそこまでにして、とりあえず、呼び 鈴を押さないか。」と北川さん。 「賛成ね。」 「それじゃ私が押しますよ。」 ピンボーン! 私が押した呼び鈴は軽快な音を立てて反響し た。 ととととと… 屋内から、軽快な足音… どす!という予想外な音の後にドアを開けた のは鼻を押さえたあゆさんだった。 「…うぐぅ、栞ちゃんいらっしゃい!」 奇跡の代償  支払われた時間はかけがえがないけれど、  想い出はこれから積み重ねればいい  そのための時間は  これから用意されているはずだから 〜 fin〜